より道の多い人生

生き恥晒して生きていく

絶望が希望そのものということにぼくたちはいつまでたっても気付かない

相変わらずタイトルがながいんだけど、先週の土曜日ついに“Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018”に行ってきたから綴らせてくれ。
2018年のライブ納めになるかもしれないこの日を、どんなに心待ちにしていたことかわからない。

朝からエンドレスリピートで聴いていたのはだいすきな『光』。
いつだって「最悪の事態」ばかりを先立って考えてしまう自分に「もっと今を味わうことを楽しむんだ」と勝手に励まされている。君という運命に見つけられてしまったわたしたちは、どう足掻いても翻弄されてしまうから。

youtu.be

どんな時だって たった一人で
運命忘れて生きてきたのに
突然の光の中 目が覚める 真夜中に

静かに 出口に立って
暗闇に光を撃て

今時約束なんて 不安にさせるだけかな
願いを口にしたいだけさ
家族にも紹介するよ
きっとうまくいくよ

どんな時だって ずっと二人で
どんな時だって 側にいるから
君という光が私を見つける 真夜中に

うるさい通りに入って
運命の仮面をとれ

先読みのし過ぎなんて 意味の無いことは止めて
今日はおいしい物を食べようよ
未来はずっと先だよ
僕にも分からない

完成させないで もっと良くして
ワンシーンずつ撮っていけばいいから
君という光が 私のシナリオ映し出す

もっと話そうよ 目前の明日のことも
テレビ消して 私のことだけを見ていてよ

どんなに良くたって 信じきれないね
そんな時だって側にいるから
君という光が私を見つける 真夜中に

もっと話そうよ 目前の明日のことも
テレビ消して 私のことだけを見ていてよ

もっと話そうよ 目前の明日のことも
テレビ消して 私のことだけを見ていてよ

どんな物語にも続きがあって、ハッピーエンドでちゃんちゃん。という訳にはいかないのが現実だ。
「光」を見つけた先に何が待っているのか、とふと考えることがあるけれど、この曲は“君という光を私が見つける”のではなく、“君という光が私を見つける”と歌う。運命に逆らうように孤独のなかを佇んでいたというのに、眩く照らされて知るのは微かな祈り。照らされたあとも歩む道は尚も真っ暗な世界だけれど、“君という光”がいるから暗闇のなかでも進んでいけるのだ、とわたしには聴こえる。

 

12/08 幕張メッセ公演 セトリ 

1. あなた
2. 道
3. travering
4. Colors
5. Prisoner Of Love
6. Kiss & Cry
7. SAKURAドロップス
8. 光
9. ともだち
10. Too Proud
11. 誓い
12. 真夏の通り雨
13. 花束を君に
14. Forevermore
15. First Love
16. 初恋
17. Play A Love Song

アンコール

18. 俺の彼女
19. Automatic
20. Goodbye Happiness

幕張メッセは本当に遠くて、行くだけでもなかなかな気力を要したし、幕張自体は音響も決していいものではなかったけれど、それすらも払拭してしまう煌めきがライブにはあった。
多分、世間ウケ100%ではないと思われる『ともだち』『Too Proud』『俺の彼女』がちりばめられているのがとてもバランスよくてよかったし、『Kiss & Cry』のアレンジ後半『Can You Keep A Secret? 』が使われていて、それがもう痺れるくらいかっこよかった。“これが彼女が聴かせたい宇多田ヒカルの音楽(絶望のなかの希望)なんだな”と納得しかなかった。
絶望のなかの希望を歌うことは容易じゃない。絶望があるから希望を持つことができるということは頭で分かっていても、表現するにはとてもセンシティブな感性と技術力が必要だ。寄り添うために想像力は必要だけれど、誰かの絶望を想像力で賄おうとするのは非常に想像力の無い行為に等しいことだから。

 

ライブを目の当たりにしながら、今年一年のことが、走馬灯のようにわたしの身体を駆け巡っていた。
新ALの発売、12年ぶりのライブ開催を発表し、SONGSにプロフェッショナルへの出演、一夜限りのラジオ復活とめまぐるしく活動されていたヒッキ―こと宇多田ヒカル氏。

もしかしたら、わたしたちは“自分の意思とは関係なく変わりゆく自分自身や自分を取り巻くこの世界をどう引き受けていくのか”ということを宇多田ヒカルにまざまざと見せてもらっていた1年だったのかもしれない。

誰かが決めつけた“ハッピーエンド”や“バッドエンド”にしても、自分の良い部分も悪い部分も全て認めてその先を見せてくれるなんて至極難しいことだ。
その軌跡が生きるということなら、わたしたち人間はなんて複雑で健気で儚く美しい生き物なのだろう。
ずっと見ていられたならと、願わずにはいられないよ。