より道の多い人生

生き恥晒して生きていく

さよならをいうにはまだ早すぎて

無自覚だったけれど、ホルモンバランスで体調を崩した。いや、崩している。現在進行形だ。思い当たることはまぁ、ある。微量の積み重ねというところか。

かつて先輩に言われた言葉が耳の奥でこだまする。

「丁寧な暮らしを体現しているよね」

わたしのしていることが世の中では「丁寧な暮らし」に当たるなんて、ちょっと皮肉にしか思えない。言うなれば「丁寧な暮らし」至上主義がわたしには不思議でたまらない。人は見たいものしか見ないし、聞きたいことしか聞いてないものなんだから、表面的な丁寧さ・美しさだなんてすぐに飽きてしまうものだ。自分はそれよりも奥深いものを見ていると、どうして言い切れるのだろうか。

自由そうでいいよね、と言われることがなにより足枷で不自由の他ならない。そのことでひとり感じるさみしさに随分と向き合わされてきた。そうやって導きだした答えは、同じような人をみつけたときに誰よりもやさしく手を差し伸べれる自分でいよう、ということだ。


土曜日、メンヘラかよって自分で突っ込みながらも、彼に送ったLINEの内容を送信取り消しにした。
たいした内容じゃないけど、いつまでたっても既読にもならないし返事がないことに痺れを切らしたとき、思わず闇に葬った過去の経験とそのときの気持ちが蘇ってとても嫌な気持ちになった。どこのどんな気持ちが蘇ったのかは覚えていないけれど、(おそらく元彼関連)その気持ちを晴らしたいがためにとった苦肉の策だったのだ。

忙しいのもわかってる。既読をつけると返事しなきゃいけないからって読まない気持ちも知ってるし、わたしは待てない女というわけじゃないけれど、こんなたいしたことのない内容を丸一日放置してしまう彼のその行動にがっかりしてしまう自分の浅はかさに一番がっかりしてしまう。

たとえ、このままフェードアウトしたって構わない。むしろその方が好都合だ。彼とこんな関係になって以来、彼からの返事が途切れてフェードアウトしかけたことが2回ある。あんなに楽しかったあとに、どうして1ヵ月以上も連絡や返事しないままでいられるのか、わたしには理解しがたい。そういう人種が存在しているのは分かってるけど、それで「俺のものになってよ」だなんて、どこの口が言うのだと憤慨したって間違いじゃないはずだ。
捻くれていると言われたって、わたしはものじゃない。たとえ、わたしがあなたのものになったとしても、きっとあなたはわたしのものにならないのでしょう。

去る者は日々に疎し、わたしはそれでも別にいい。わたしの日常に介入しないのならば、わたしの心の中からも消えてください。消えたくないと思うなら思う存分介入してくれないと困るんです。


日曜日、案の定電話がかかってきて、予想通りすぎる展開に喜びよりも驚きを隠せなかった。
電話がくるだけ、一歩進展なのだろうか。でも、相変わらずわたしが尋ねない限りそのことが話題に上がることはない。気にしない性格だとしても、ちょっと横暴な気もする。どこを基準に判断すればいいのか教えてほしい。

その電話口で急に彼に「あいたい」と言われて、恐れと喜びに満ちたまま会いにいった月曜日。

火曜日、連日の寝不足と体調不良が相まって寝込んだ延長線上で、また既読のつかないLINEを送信取り消しにした。このまま再び彼と会う予定の週末まで、彼がそのことに気がつかずにいてくれたらいい。なんなら気にも留めていない感じでいて欲しい。今、電話がかかってきてしまったらなんて言っていいかわからない。「もう会いたくない」なんて、一番後悔しかねない言葉を投げかけてしまいそうだ。

水曜日の今日、駅へと向かう途中で思った。
わたしは恋人でもなく、自分にとって都合のいい関係でもでもなく、ただ「無条件でわたしを気にかけてくれる人」が欲しいのだ。彼に問うべきことは「わたしのことが好きかどうか」でも「どうしてわたしなのか」でもない。
心から知りたいこと、なにより伝えたいことは、「あなたにわたしを明け渡して本当にいいですか」ということなのかもしれない。

思えばわたしはそういう安心をずっと欲しがっている気がする。そういう安心をくれる人にしか甘えることができない。甘えさせてあげられるけれど、わたし自身は甘え下手だから、甘えられる相手じゃないときっと長くは続かない。いつだってわかりやすくずぶずぶに愛されなきゃ困る。ただでさえわたしにはきれるカードが少ないのだから。

そして今。会いに行ったあの月曜日の夜、まどろみながら彼に言ったことをぼんやり思い出している。

「まだぐちゃぐちゃな気持ちのままで会いに来たわたしをもっとほめてほしい、と言おうと思っていたけど、迎えにきてくれたから何にも言えなくなっちゃった」
「できるだけ長くそばにいてね」

話している途中、彼に「その考えは変わらないの?」と聞かれた気がするけど、あれはなにについて話していたんだっけ。眠れなかったら困ると思ってベッドに入る直前、こっそり睡眠導入剤を飲んでしまったから、薄っすら霧がかって全ては思い出せない。


あぁ、こうやって考えていると
今、会社でやっているマネジメント研修みたいで滑稽だ。

“さぁ、あなたの人生の優先順位を決めてください。”