より道の多い人生

生き恥晒して生きていく

思い出になれないわたしたちはどこにも行き着く場所はない

3:46
好きなんだよね、と言われて途方に暮れることってあるんだと思った

3時間にも及んだ彼との電話のあとで、途方に暮れるあまりに全然眠ろうとしない頭をクールダウンしたくてiPhoneのメモに書き込んだ。好きって、こんなにも実感の伴わない言葉だったっけ。

あれから1週間。脳内で何度再生したか分からない。リフレインする声そのものに恋しそうになるのに、考えれば考えるほど繋がるはずの回路が見つからない。そんなことってあるんだなと、まるで他人事のように思う。この関係をはじめた一人でもあるくせに、自分でも支離滅裂だとつくづく呆れてしまう。
彼と一緒にいる時間はもちろん自分が選んで決めた時間だから後悔はないけれど、「彼と今後どうなっていきたいのか」を考えるとどうやっても見通しが立たない。じゃあ、なんではじめたんだって話ではあるんだけど。

先日、ランチタイムで人の気配が薄くなったオフィスをいいことに、会社の先輩と恋愛話に発展したとき「正直な話、好きと言われても、もうずっと付き合うってことがセフレとどう違うのか分からないんですよね」と口を滑らせてしまった。
「長く付き合って、結婚手前まで行った女性はだいたい“好きってなんだっけ”ってこじらせているよね」そう言っていた先輩も前にお付き合いしていた女性と、お互いに「出会うのが早かったね」と言い合っていたらしい。運命的な出会いだったからこそ、“もうすこし遅ければ”と思う気持ちは身に染みるほど分かる。
“もう少し自分に力があれば、すべてを受け入れて包み込むように支えられるのに”
そんな、言い訳にも聞こえる想いは永遠に尽きることない。だからこそ、本当にその人と縁があるならまた必ず出会えるよ、と言った先輩は自身もそう思いながら30を過ぎ、今の彼女さんに出会ってそれはそれで満足している、と笑った。

変わりばえのしない世界の中で、あの人だけは特別と思えたわたしの20代前半。本当に苦しくてかけがえのないほど大切な時間をあの人と過ごせたのは一生の宝物だと思う。
「あの人はたしかにめちゃくちゃだったけど、あなたを想う気持ちは本当だったと思う。だからもし、また巡り合うことがあるのなら結婚して欲しいよ」とあの人を知る友達は言ってたけど、もしも、本当に彼がこっちに来るとなったらわたしはどうするのだろう。そんな気配すらないのに考えても仕方ない事ばかり想いを馳せている。あれから何度、あの人に電話したくて携帯を手にとってはボタンを押せずに画面を見つめていただろう。

今、あの人ではない彼と一緒にいれるのは「今のわたしだからだ」とは思う。1年前のわたしでも、2年前のわたしでもなく、まぎれもない今のわたしじゃないと始めるに値しなかっただろう。今だって十分に納得しているわけじゃない。彼といて楽しい気持ちはあるけれど、それはわたしがわたしをコントロールできるときに彼に会っているからにすぎない。完全に割り切っているとは言い切れないから、感情を抑えてひとり悶々としているわたしは彼からどう見えているんだろう。

LINEの検索枠で、ある単語を検索していたらあの人のLINE画面が上位にあがってきて、見なきゃいいのにうっかり見てしまったものだから大変だ。
「君のことが好きなのに 付き合っているのに 一緒にいれなくて悲しい」
「まだ君のことが好きなんやで」
電話と文字では全然情報量が違うのにどうもこんなに伝わるものの熱量が違うのだろう。そう思ってしまうわたしはなにをこだわっているんだろう。


1年かけて築きあげたものを1年かけて傷つけあって
1年かけて向き合って1年かけて決意した
それから1年かけてあの人を忘れるために苦しんで
そこからさらに1年が経とうとしている。

最近、あの人のことを頻繁に思い出してしまうのは、彼といるからなのか。それとも彼は関係なく、完全にあの人から脱却する一歩手前であるからなのか。生物が進化するとき、進化の一歩手前で必ず一度退化するというけれど、これは退化なのだろうか。

「こんな意味のないことに時間を費やしたり、こんなつまらないことで悩んでいる暇なんてわたしにはないはずだ」と毎回思っては、決意や確信を伝えようとするけれど、彼を目の前にするとまるで砂時計のようにするするとこぼれ落ちていってしまう。笑っちゃうくらい言葉を失って、「会いたい」でさえ、うまく言えやしない。求められなければ会いにいかなくてもいいか、と簡単に諦めてしまう。それでも、あの3時間の電話の次の日に会いに行って一緒に過ごした時、「何にも考えずにこうして過ごし続けられたらいいのに」と思ったのは本当だ。

「一人でいると色々考えちゃうから、鬱陶しいくらいそばにいてください」とは言えやしなくて、やはりわたしは今日もどうしようもなく途方に暮れてしまう。