より道の多い人生

生き恥晒して生きていく

嵐の夜を迎えにいく

ほどよく薄暗い部屋、暖かい布団、わたしを縛り付けるものなんてなにひとつ存在しえない空間なのに、なにひとつだって味方だと思えるものがない夜だった。
脈打つ心臓がズキズキと、時計の秒針みたいに規則正しく響く。忘れかけていたはずの恐れが条件反射のように呼び起こされて、どんどん息の仕方がわからなくなった。
あぁ、どんなに大丈夫だと思っていても、きっとこの先もこれだけは変われないんだ。どうやらわたしは、暗闇でひっそりこちらの様子を伺っていた絶望と目が合ってしまったみたいだ。はっきりと気付いたときにはもう抑えきれなかった。とめどなく流れてくる涙と思考の海に溺れてそのまま沈んでしまいたかったのに、身体はそれを許してくれない。仕方なく睡眠導入剤を半錠割って、喉の奥に押し流した。
余りに苦しくて何度も起き上ってしまう。繰り返される絶望のなかで、なんとか自分を取り戻そうと足掻くようにこの世の果てを行き来していた地獄の2時間半。みじめで情けなくて、誰にも見せられないかっこわるい姿を「さらけ出してしまわなきゃ」とも、頭のどこかで考えていた。もう隠さなくていいんだ。だた生きているだけで、晒されてしまう世界に怯える必要はもうない。そんな世の中だけど、誰も悪くないって知ってるよ。

さよなら、明るい朝の光、鼻先くすぐる香ばしい紅茶の香り、頭をなでるあたたかい掌、好きだったものたち。誰からも愛されてしまう女の子になりたかった。